日本 VS パラグアイ 南アW杯 決勝トーナメント1回戦

日本 VS パラグアイ 0-0(PK5-3)
南アW杯 決勝トーナメント1回戦

■前提
どちらが勝っても初めてのベスト8となる。
南米のパラグアイ、アジアの日本どちらも
この大会では堅守速攻のチーム同士の戦いとなった。

■スタメン
川島
駒野 田中 中澤 長友
阿部
長谷部 遠藤
松井 大久保
本田

いつも通りのスタメン。

■前半
前半は穏やかな立ち上がり。
どちらも様子見の展開も多い。

やはりパラグアイは南米らしく身体の使い方がうまい。
それにより中途半端なクリアを本田に預けても
なかなかキープ出来ない。

この南アW杯ではビルドアップよりも
手数をかけずに本田に預けて
そこから松井大久保のアイディアで崩す、という
ワンパターンだが、守備のバランスを崩さない攻めをしている日本。

この試合ではその本田がキープしきれない場面が多かった。
それでもDF陣は安定した守備を披露。

そんな中、松井がうまく右サイドを抜け出してPA内にドリブルで侵入!
そこからの横パスを本田がミドルで狙う!!

しかしこれは狙いすぎたためか、アウトにかけたボールは
曲がりすぎて枠の外に。。。
逆サイドには大久保もフリーでいたがここはシュートするのが本田。

その後パラグアイもバリオスのキープ力、バルデスの突破と
見せ場を作るも、膠着状態。

日本も中央の中途半端なボールを拾った松井が
ループ気味にミドルシュートを放つも惜しくもバーに嫌われる。

たがいい最後の攻め手を欠いた前半となった。


■後半、、、勝ちを求めて
後半もさほど変わらない展開が続く。
お互いなかなかシュートまで持ち込めない。

日本は松井に代えて岡崎。
デンマーク戦での活躍と、これまでのゴールハンターとしての嗅覚に期待する。

さらにここで岡田監督は賭けに出る。
守備の要。

アンカーとして置いた阿部を外して中村憲を投入。

4-3-2-1から4-2-3-1と 守備的MFを1枚けずって
中村をトップ下とする、これまでの攻撃サッカーへの回帰を試みた。


思えば岡田監督は頑固な監督であった。
執拗にバックパスを繰り返し、中村俊のFK頼みだったサッカーを続け
批判を浴びながらも攻撃的な姿勢、パスをつなぐサッカーに拘りをもった。

そしてW杯直前にそれを捨て去る覚悟をもった。
勝つために、、、

そしてこの大一番、自分が信じた道がどうだったのか?
このサッカーで日本は戦えるのか?

それを試したかったのかもしれない。


覚悟をもったチームは強い。
中盤の守備を1枚減らしながらもDF陣は集中を切らさず
遠藤さえも攻守に走り回り、相手へのプレスを止めない。

途中出場の岡崎も攻撃では見せ場は少なかったものの
相手のロングボールやクロスに何とか身体を当てて
少しでもリスクを減らす。

攻めては本田がほんのわずかな可能性しかないボールを追いかけ
少しでもマイボールになるように
少しでも相手陣地に攻め入れるように、、、

こういった献身的な姿勢、そしてボールへの執念こそが
「堅守」の正体だと感じた。

阿部を外した日本はそれでも守備は崩れなかった。
だが、攻撃でもやはり一手足りなかった。


■延長戦
迎えた延長戦、さらに岡田監督は攻勢に出る。
ここまで3試合、走り続けたサイドの大久保に代えて玉田。

そのスピードと突破力に賭けた。

日本は左サイドで苦しい体制ながらキープした本田が
一瞬できた裏のスペースにほうりこむ。

これを拾った玉田が爆発的なスピードでPAへ攻め込む!
DFにコースを切られながら狭いエリアから選択したプレーは、、
中央の中村へのパスだった。

そしてこれは無常にも繋がらず・・・

パラグアイも足が止まりながら必死の攻撃を見せる。
守備ではうまくやり過ごしながら
攻撃のときにはバリオスが強さを見せ、
クロスから何度もチャンスを演出。

しかし幾度ものクロスやシュートを日本DF陣はブロック。
川島も随所にファインセーブを見せて一歩も譲らない。

そのまま試合は0-0で終了。勝負はPKに委ねられた。


■PK戦 
PK戦、、、

パラグアイは一人目が確実に決める。
日本の一人目は遠藤。
プレッシャーの中冷静に決めて1-1。

パラグアイも譲らず落ち着いて決めて2-1。
日本は長谷部。
ここも力強く蹴り込んだボールはネットを揺らして2-2。

さらにパラグアイも3人目が冷静に決めて3-2。
PKでもお互い譲らない展開。

そして日本の3人目は駒野。

長く、妙にゆったりとした時間が支配する中
駒野の蹴ったボールは
無常なるバーの音を響かせて跳ね返る…

ブブゼラが鳴り響く中、こうもはっきりとバーの音が響き渡るものなのか…

パラグアイは4人目もしっかりと決めて4-2。
日本の4人目は本田。

重苦しい空気の中、本田は憎らしいほど冷静に
ど真ん中にゆるいシュートを決めてみせる。
空気を変えるシュート。彼の精神力に感嘆する。


それでも決めれば勝ちが決まるパラグアイ。
蹴るのは途中出場のカルドソ。

対する川島は、、、

我慢しきれず動いた逆に落ち着いて決められ5-3。
日本の冒険が終わった瞬間だった。


■悔しさと涙を未来へ…
駒野が泣き崩れ、それを松井が抱きかかえる。
励ましていたはずの松井もいつのまにか止まらない涙に覆われていた。

中澤はすべてを出しつくしたかのように
満足げな、そして悲しげな表情でピッチを見つめ

田中は放心したかのようにベンチにもたれかかった。
強気な大久保が人目もはばからず涙を溜め、
それでも長谷部は前を向いて「胸を張って帰る」と言い切った。

歓喜に沸き立つパラグアイとサポーター。
悲喜こもごもが織りなす試合終了後の時間。

これを見て、不思議と 「サッカーっていいな・・」と思った。


誰もがすべてを出しつくした。
それでも届かないことがある。

出し尽くせたことにある種の満足感を感じ
この大会に確かな歴史を作れたことを誇りに思い

それでもやはり届かなかった1点を悔やんで
決めれなかったシュートを悔やんで
誰もが悔しさと満足の狭間に居たように思う。


この試合で、日本は初めて「悔しい」と思えるだけの経験が出来たのだろう。

何もわからなかった1998年。
自国開催で気運に乗った2002年。
アウェーでどん底に落とされた2006年ドイツ。

そしてやっと、勝つか、負けるか、の勝負が出来るようになった。
ここまで苦しんで苦しんで戦い続けてやっと、、、

そしてここからの一歩はこれまで以上に険しい。
それでも挑戦しないことに先はない。

今はただ、ただこの誇れる日本代表に精一杯の拍手を送りたい。

戦術じゃない、、、フォーメーションでもない、、足先の技術じゃない

本当の闘志と戦う気持ち、そして勝利への意思を見せてくれた
このチームに 感謝。



■選手総評(パラグアイ戦)

川島 6.5 素晴らしいファインセーブを見せた。PKは経験の差か。
駒野 6.0 悲観の必要はない。PK失敗もそれ以上の素晴らしいプレーを披露
中澤 7.0 数々のシュートブロック、激しい当たり、戦う気持ちを見せた。
田中 7.0 パラグアイの攻撃を零封。ロングフィードでも貢献。
長友 6.5 粘り強い守備は健在。攻守に運動量豊富なプレー。

阿部 6.0 この日もしっかりとした守備で貢献。戦術的理由で交代
遠藤 6.5 ビルドアップの見せ場は少なかったがFKと苦手な守備も必死に。
長谷部6.0 やや攻撃に出る迫力に欠けたが無くてはならない存在

大久保5.5 攻守に走り切った。得意の突破は見せられずも献身的にプレー
松井 6.0 素晴らしいシュートやパスを見せるも最後を崩し切れず。
本田 5.5 惜しいシュートはあったが決めきる所を求められていた。

岡崎 5.5 アグレッシブなプレーは健在。守備でのプレスを強めた。
玉田 5.5 一度抜け出しから大きなチャンスを得るも決め切れず。
中村 5.0 トップ下で攻撃を任されるも決定機を演出するまでは至らず


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最後にメンバーに対して

川島
本当によく成長した。
川島のファインセーブに何度救われたことか。
オランダ戦の1対1を止めたこと、デンマーク戦での完勝でさえも、
GKの決定的な活躍が不可欠だった。
大会を通して素晴らしいプレーで日本の堅守を支えた。

駒野
最後のPK失敗は決して悲観することではない。
泣くこともない。
日本の誰もが彼の献身的なプレー。
攻守に安定感のあるプレーを見てきた。

中澤
まさに全盛期が戻ってきたかのようなプレーぶり。
シュートに対して身体に当てる、クロスに対して必ず先に触る、といった
泥臭い守備の部分で類まれな才能を発揮。
相手のシュートコースに尽く身体を投げ出し、必死に食らいついた。
その姿に日本中が勇気づけられたことだろう。

田中
中澤同様日本のゴール前を死守し続けた。
FK時には必ず相手ゴール前で競り合い、守るときも
必ず日本の上空には彼がいた。
本田のキープを活かす、守備の時間を減らすためのロングフィードも正確で
まさに日本の戦術の核となっていた。

長友
相手のエースを潰す。
シンプルに相手に食らいついたとき長友の粘り強さは
確かに各国のエースを上回った。
カメルーンのエトー。
オランダのエリアやファンペルシー。
デンマークのトマソン、
パラグアイのバリオス。
彼らに得点を許さなかった事実が彼にとってのW杯だっただろう。
まさに獅子奮迅の活躍


阿部
彼がいなかった?と思うとぞっとするほど守備で効いていた。
バランス感覚、危ない空間を察知して埋める能力。
ここぞという時のインターセプト。
相手に簡単に前を向かせない守備。
派手さはないが、チームのために自分を犠牲にし続けた。
長友と並んで、相手の光を鈍らせるための役割を忠実にこなし続けた。

遠藤
日本の舵取り。頭脳と呼ばれて久しいが今大会ではより泥臭くプレー。
守備で体を張ることを厭わず、せめても運動量豊富にプレー。
それでいてたまに魅せる縦パスやビルドアップで日本の攻めを支えた。
デンマーク戦でのFKは彼自身が勝ち取ったすべての努力への褒賞だろう。
守備に忙殺され、その能力を生かす場面は少なかったものの、
その技術の高さは世界でも確かに光り輝いた。

長谷部
急な主将交代。GK交代に戦術の変化。
戸惑う選手が多い中、よくぞチームをまとめきった。
プレーでも攻守のすべてのシーンに顔を出し、
攻めでも守りでも存在感を発揮。
彼のキャプテンシーが日本を引っ張る指針となった。

大久保
ほんの数年前、誰がこのような大久保を想像しただろうか?
やんちゃで自由奔放だった若者がチームのためにすべてを投げ出し
そのすべてを出しつくした姿を見て、誰もが心を打たれただろう。
攻撃ではフォローが少ない中、その強気さで意地でもシュートにいくという
意欲と心の強さを見せ、何度となく世界のDFを慌てさせた。
ゴールを決めるところまでは行けなかったが確実に日本の推進力となった。

松井
大久保同様、五輪のときにここまでの献身的なプレーヤーになることなど
誰も想像できなかったかもしれない。
敵陣を切り裂くドリブル、素晴らしい技術でのトラップ、創造性あふれるシュート、
攻撃のあらゆるシーンでその才能を輝かせた。
それでも守備の際にはDFラインまで戻り、攻撃ではフォローがい中
キープして何とか本田につなぐ役割も果たした。
松井と大久保が攻め手の少ない日本の攻撃に彩を加えた。

本田
エース中村俊の不調から、急遽日本を救う役割を任された。
しかし彼にはそのすべてを力に変える精神力があった。
カメルーン戦での決勝点、
デンマーク戦での伝説ともなりえる長距離の無回転FK。
さらには素晴らしいドリブルからのアシスト。
華麗なプレーだけでなく、DF陣からの無謀なロングボールにも
身体を張り続け、何とかキープし味方を生かす。
常に最前線で敵に削られ潰されながら、それでも得点し日本を決勝Tに導いた。
最後を決めきる、という役割を与えられ、それを果たした彼は
誰が何と言おうと今大会のMVPと言って良いだろう。


*
岡崎
予選突破のときのエースながら、大会ではサブに甘んじる。
オランダ戦で決定機を外すものの、デンマークでは答えてみせた。
攻守に激しくプレーし、サブであっても衰えない
彼の不屈の精神と闘志が日本に与えたものは大きい。

内田
大会直前に不調に陥り出場機会はなく。
それでも才能豊かたな彼の今後を奪うものではない。
駒野、長友らの必死の守備を見て何を感じ、何を為すか?

中村俊
守備重視の戦術になり、ポゼッションを放棄したのは
彼自身の不調も影響したかもしれない。
確かに精彩を欠いていた。
唯一出場したオランダ戦も運動量は少なく呼吸も合わなかった。
サブという立場を受け入れるのに必死なようにさえ見えたが
それでも彼の左足が日本を救ってきた事実は変わらない。
負けた悔しさと彼自身の悔しさが入り混じったパラグアイ戦の後の表情は
それでもまだ上手くなりたいと願う彼の心の現れだろうか…

玉田
出場機会は少なかったものの持ち前のスピードを披露。
もう少しいろんな場面で見てみたかった選手ではある。

矢野
大会前は出番などないと思っていたが(失礼)
カメルーン戦での勝利のクローズに貢献。
攻守に働けるFWであることを証明した。

岩政
日本が誇る2人の偉大なDFの前に出番はなく。
それでも裏からしっかりと支えていただろうことは想像つく。
彼の高さと強さも確実に日本の武器である、今後の成長を期待したい。

中村憲
予選時の活躍からすると物足りないが、それでもパラグアイ戦で
存在感は見せた。
いつどこで出場しても変わらない貢献を出来る安定感の高さを見せた。

今野
DFとしては果たす役割は大きくはなかったものの
チームを盛り上げ、率先して動き続けた。
ベンチを含めたチームワークの良さは確かに力になった。


森本
カウンター型の攻撃ではキープできるFWが必要なため
最後まで出番はなく。
若い彼がW杯で何を得たか?

稲本
試合のクロージングに貢献。
時間稼ぎの交代が多かったものの、こういう時間に
安心して出せる存在というのもチームにとっては貴重である。

楢崎
大会前にレギュラーをはく奪。
日本の躍進をどう見たのか?
複雑な心境だっただろうが、おくびにも見せずチームを盛りたてた。

川口
異例の選出となった(骨折から数ヵ月後に代表入り)
戦力として、、ではないのを本人も理解していただろう。
それでもこれまで日本サッカー界に貢献し続けたのは
川口と楢崎であることは疑いようがない。
その彼が裏方としてベンチをまとめ、チームをひとつにした。


最後に。

この戦術に未来はあるのか?
チャンスの数が少ないサッカーでよいのか?
ポストができるFWがいないと成り立たない攻撃で日本は点が取れるのか?

色々言いたいことはあると思う。
それでも、

今、できることを、精一杯やりつくして
そして得た結果に何ひとつ間違いはない。

そうやって結果を積み重ねて
そしてまた苦しみ続ける4年を経て

やっと次のW杯を戦う権利を得られるのだろうから。

今は戦い抜いた23人と監督に 礼。





※ この記事は、2010年6月29日にアメブロ「虚言」で書いたものを移しました。

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